【株式会社日本リスクマネージメント(JRM) 】 海外旅行トラブルニュースNo.20
 
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 お守りが役立つ時 海外旅行保険
[目次]
衣食同源と脳出血疾病治療費用担保特約
海外医療支援協会 酒井 悦嗣

     
 
衣食同源と脳出血
 
     

 海外旅行保険の請求原因について見ると、全体の約1割はケガによる治療費の請求、同じく5割強が病気による治療費の請求である。つまり全体の6割強が医師の治療を必要とするものである。このため、保険会社は現地での診療を受け易くするためキャッシュレス提携医療機関の開設に力を入れている。また、病気の中で症状が重く入院を要するもので、場合によっては生命に関わるケースの原因は脳血管部で発生するものが最も多く、次が心臓部となっている。

  これらの重篤な病気は長い間の生活習慣が影響することを誰もが知るところであるが、多くのひとが発症するまでは『まだ大丈夫だろう。』と思っているようである。それほど生活習慣を変えることは難しいといえる。不思議なことにヨーロッパやアメリカに赴任するひとはそれなりに意識するが、アジア、特に東アジアに赴任されるひとは、距離的・食習慣的に近いことからあまり健康に関する意識が高くないように思われる。一方、次表にあるように世界を6つの地域に分けて保険事故全体に対する病気の割合を比較すると、最も高いのがアジアである。

(ジェイアイ傷害火災保険調べ)

 特に近年渡航駐在されるひとの多くなった中国では、距離的に近いこともあり単身赴任が多い。衣食同源といわれる中華料理の国でも、バランスを欠いた食事に陥りやすい男性の一人暮らしの所為か、悪化した生活習慣病に影響された脳卒中や心臓疾患を原因とした緊急搬送が増加する傾向にある。

 北京の現地法人総経理のT氏(55才)は、2月21日朝から役員会を開いていた。同席した日本人の役員によると、会議中いつもと異なり2度ほどスピーチが止まり、言葉が出てこないところがあり、おやっと思って見るとT氏が会議室のテーブルにバタッと突っ伏してしまった。直ぐにインターナショナルSOSクリニックのドクターカーを呼び、同クリニックに搬送した。緊急に行った検査の結果、病名は『脳出血』で予断を許さない状態であるという。脳幹部に近い部位での出血がみられ、呼吸中枢を圧迫する可能性もあるので人工呼吸機が装着された。その後、現地主治医とアシスタンス会社のメディカルダイレクター(医師)の協議の結果、安全度から日本で治療を行うこととなり、医療専用の小型チャーター機で搬送することになった。当日は、ドクターカーで空港まで運び、そのままストレッチャーで機内に運び込み、北京空港から成田まで直行した。成田からはA医科大学付属病院まで寝台車で静かに運び、入院した。

 T氏の海外旅行保険の治療費用保険金額合計1千万円は、この段階で限度額支払いに達したが、以降は健康保険に切り替えて治療を継続している。万が一のときに、最も安全で、最も迅速に且つ適切な方法で日本に運ぶことがその後の結果を大きく変えることは、数多の事例が証明している。

   現地の医療状況によっては より良い治療が可能なところへ緊急搬送を行うことが必要である。死亡保険金は兎も角として、治療費用保険金額に余裕さえあれば保険会社の対応担当者は自らの判断だけで最善の方法を取ることが出来る。治療費用保険金を大きく加入された本件も、ご家族の皆様にも喜んでいただけた理由がそこにあった事例である。

海外旅行傷害保険疾病治療費用担保特約


Quick Study !

ワンポイントレクチャー
<お支払いできる主な場合>
  • 医師の診察費、治療費、入院費等
  • 入院中の病院もしくは診療所に専門の医師がいなかったり、そこでの治療が困難なことにより、他の医療機関に移転するために必要な費用。(付き添いの医師、看護婦が必要な場合その費用を含み、日本国内の医療機関へ移転することが必要な場合にはその費用実費も含みます。)
  • その他

詳しくはご加入の保険約款をご参照ください。

Q & A
Q::

本件では、救援者費用保険に加入していなかったのですか?

A::
はい。自由設計タイプで基本契約と治療費用だけの契約でしたが、大きな金額でご加入であったため幸いしました。
Q::

国内では健康保険に切り替えないといけないのですか?

A::

いいえ、治療費用保険金額に余裕がある限り180日以内の治療費を払うことが出来ますが、入院が長い場合は通常健康保険を使いながら保険金を患者さんの自己負担額に充当されることが多いように思います。本件は保険金額が終了して健康保険を使用しました。

Point   事故時に対応する立場からのアドバイスとして『治療費用や救援者費用』は、年齢・性別・社会的立場に関わらず、いざという時同様にかかります。また、支払いの裏付けがないと治療をしてもらえないことにもなります。保険に入る場合、この二つだけは必ず、充分に入りましょう。これ以外は、ご判断で必要な金額で構いません。



2006/4/17

つづく

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衣食同源と脳出血疾病治療費用担保特約


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